牛乳パン生みのまち「駒ヶ根市」

現在、長野県内では、多くのお店でオリジナルの牛乳パンが作られていますが、実は牛乳パンは全国区のパンではなく、長野県のご当地パンなのです。

そして、その「牛乳パンの生みの親」と言われている中坪さんは、なんと駒ヶ根市在住の方です。

そうしたことから、当市では、平成30年6月に「牛乳パン生みのまち」宣言を行い、それ以降、県内からパンを集めて、紹介・販売する取り組みを行っています。

牛乳パンとは

丸六田中製パン所

ふわふわしたコッペパンのような生地の間に、白いクリームが挟み込んであるパンで、形は長方形や丸型などお店によってさまざまです。

大手パン業者も販売しており、Pasco(敷島製パン)は、パッケージに「信州発」の文字を印刷して、関東・甲信越・中部地区で販売しています。

今や長野県のソウルフードとして、さまざまなメディアで取り上げられるようになっています。

(右の写真は、駒ヶ根市内の丸六田中製パン所の牛乳パン)

誕生エピソード

当時を語る中坪さん

中坪 兼吉さん

駒ヶ根市在住の中坪 兼吉(なかつぼ かねきち)さん(87才、令和3年現在)は、約65年前の昭和30~32年頃、当時伊那市にあった「若増製パン」(現在は存在しない)に勤務していた。

朝5時頃に年配の女性が店に来て「パンはありませんか」と聞かれ、「こんな時間にはないよ」と一度は断ったが、ジャムがあったと考え直し、女性が「どんなパンでも良い」と言うので、パン粉にして使おうと取ってあったパンにジャムを塗って渡した。

翌日もまた来店し昨日のパンが欲しいと言うが、ジャムをきらしていた。洋菓子の担当者に確認すると、菓子用のバタークリームが残っているというので、それを塗って挟んで渡した。これが牛乳パンの始まりだった(諸説あり)。

すると、また次の日もその女性が来店し、「昨日のパンをあるだけ欲しい」と言われた。どうやら、近所で美和ダム建設作業員の賄いづくりをしている人だったようで、それ以降も毎日訪れるようになった。

その様子を見ていた若増製パンの社長が「中坪、ひょっとしたらこれは売れるかも知れんぞ」と言うことで商品化したところ、牛乳パンは飛ぶように売れ、最盛期には1日1,000個以上焼いても追いつかないほどで、寝る間もなかったといいます。

誕生秘話 映像(Youtube)

牛乳パン物語サムネイル

牛乳パン誕生の再現VTRと中坪さんのインタビュー動画です。ぜひご覧ください。

パンの改良

クリームに牛乳は入れていなかったが、なかなか牛乳を飲むことができない当時の食糧事情もあって、栄養価の高い「牛乳」をパンの名称にしたことも人気商品となった要因の一つであった。実際にパンの生地に牛乳を入れるようになったのは、人気が高まった翌年以降の話。

焼面も最初は角が丸くなってしまい、四角に焼くことが難しかった。また、焼いた皮が剥離してしまう課題もあったが、無数の穴をつけるなどの工夫を重ねた。なお、表面の焦げ目には卵の白身を、生地に牛乳を使うなどして、改良に10年ほどかかったという。

牛乳パンの販売価格は、当時あんパン約10円に対して20円~25円くらいだった。

県下に普及

牛乳パン講習会

人気の高まりを受けて、長野県パン組合(平成28年解散)の理事長を務めていた若増製パンの社長に対して、組合に加盟している各店主から牛乳パンの講習会を行ってほしいとの要望があったことで、中坪さんの指導による講習会が行われた。

当時、中坪さんは自社の利益等を考え、他店に教えることには反対だったが、社長の「みんなに教えて共有し、広げるべきだ」という考えで2日間説得され、講習会の講師を務めた結果、県下各地に広がり今に至る人気商品となった。

デザイン

今も残る子どもの絵柄

現在、県内各地で広く販売されているが、なぜか各店舗のパッケージは非常に似通っている。半透明の白地に、濃紺の「牛乳パン」の文字と、就学前のような少年の全身スケッチ、牛の顔などが印刷された独特のデザイン。

県内各地で売られているにもかかわらず、似通ったデザインなのは、元々白地に、濃紺の「牛乳パン」の文字と、牛の絵が印刷された県下統一の袋だったが、木曽福島の「かねまる」パン屋のお母さんが、我が子をスケッチしたものが、長野県パン組合で共有されたことによる。

市の取り組み

市の取り組み(高校生企画販売)

市では、牛乳パンの生みの親といわれる中坪さんが在住していることから、平成30年に「牛乳パンの生みのまち」宣言を行い、牛乳パンを使ったまちおこしに取り組んでいます。

令和元年には、赤穂高校の生徒と津具屋製菓(高森町)と共に、「牛乳風味パンケーキ」を開発。土産品にして全国に普及できるよう、牛乳パンの味や形は変えず、生地を日持ちするように工夫し、包装は小分けにしています。商品内容とパッケージデザインの大部分は、同校の部活動「商業実践部ビジネス班」のメンバーが考案。この新商品は、令和元年の商工まつりでも販売しました(現在は、改良を加え、駒ヶ根ファームスのお土産ショップでも購入できます)。

また、市では、毎年10月に行われる商工まつりなどのイベントの際に、「牛乳パンまつり」と題して、県内の牛乳パンを集めて、販売する取り組みも行っています。

このような活動を通じて、多くの方に牛乳パンの歴史や魅力を発信しています。

この記事に関するお問い合わせ先
商工観光課 商業係

〒399-4192
長野県駒ヶ根市赤須町20番1号
電話 0265-83-2111(代表) 内線431
ファックス 0265-83-1278
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更新日:2021年09月01日