明るい選挙の推進(寄付の禁止)
公職の候補者等の寄附の禁止
(公職選挙法第199条の2)
公職の候補者等は当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない。
「いかなる名義をもってするを問わず」とは、どのような理由をもってするを問わずという意味であり、公職の候補者等の行う寄附であれば、経済活動として行うもの、宗教活動として行うものであってもすべて違反となります。
「公職の候補者等」とは、
- 現に立候補している候補者
- 立候補の意思を有している者
- 現在公職にある者。なお、現在公職にある者は次の選挙に引き続き候補者となる意思を有すると否とを問わない。
「当該選挙区内にある者」とは
- その者が選挙権・被選挙権を有するか否かは問わない。
- 当該選挙区内に住所又は居所を有する者。
- 住所又は居所を有しないが、寄附を受ける際に当該選挙区内に滞在する者。
- (注意1)自然人及び法人のみでなく、人格なき社団も含まれる。
- (注意2)国及び地方公共団体も選挙区内にある者と解される。
- (注意3)法人については、その従たる事務所等(支店、営業所など)の所在地が当該選挙区内にある場合も該当する。
公職の候補者の寄附の禁止の例外
- 政党その他の政治団体又はその支部に対してする場合
- 親族に対してする場合民法上の親族と同じ。六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族をいう。
- 当該公職の候補者等の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く)としてする場合
公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の禁止
公職の候補者等以外の者が行う当該公職の候補者等を名義人とする当該選挙区内にある者に対する寄附は、特定の場合を除き、いかなる名義をもってするを問わず、これをしてはならない。
「公職の候補者等以外の者」とは
- 公職の候補者等の親族、秘書、後援会の会長等
公職の候補者等の関係会社等の寄附の禁止
(公職選挙法第199条の3)
公職の候補者等がその役職員又は構成員である会社その他法人又は団体は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない。
例えば、公職の候補者等が会長となっている団体が、候補者等の氏名を表示した表彰状を授与することはできるが、候補者等の氏名を表示した記念品やカップ等を贈ることは禁止されます。候補者等の氏名を表示しないで記念品やカップ等を贈ることは差し支えないとされています。
公職の候補者等の行う寄附の禁止に関する具体例
- 選挙区内にある者に対してする御中元、御歳暮、入学祝、結婚祝、出産祝、お祭り等の寄附、お餞別等の従来から慣行として行われているようなものであっても、違反となります。
- 公職の候補者等が各種の行事に招かれたとき、徴収の根拠、範囲、金額、徴収方法等からみて会費と認められるものを払うのは寄附にはあたらないと解されています。会費制の結婚式に招待されて出席し、その会費を支払うことも同様です。
- 公職の候補者等が正月に自宅に来た選挙区内にある者に対し酒食を提供することは禁止されます。
- 公職の候補者等が選挙区内の他の選挙の候補者に陣中見舞をすることはできません。
- 公職の候補者等が選挙区内にある者に対し色紙を贈ることは禁止されますが、選挙区内にある者から差し出された色紙にサインをすることは、一般的には、寄附にはあたりません。
- 市長が自己の財産を、当該市、当該市を包括する県又は国に対して寄附をすることは違反となります。国及び地方公共団体は、当該選挙区内にある者に含まれると解されるためです。
- 知事や県議会議員が、支給された給与のうちの一部を返上したり、具体的に生ずる給与請求権の一部をあらかじめ放棄することは違反となります。債権の放棄も寄附にあたると考えられるためです。したがって、そのような必要がある場合には、条例を改正し、給与の暫定的な減額措置をとることが相当です。
- 公職の候補者等が選挙区内にある者に対し、匿名で、又は妻の名義で寄附をすることも禁止されます。ただし、公職の候補者等の親や子どもあるいは配偶者が、その経費を自己負担し、自己の名義で寄附することはできます。
- 公職の候補者等が、葬儀の際に僧侶等に対し、いわゆるお布施を出すことは、役務の提供に対する債務の履行と認められる限り寄附にはあたらないと解されています。
- 選挙区内の過疎地で交通不便な場所において行う純粋な政治講習会に関し、公職の候補者等がバスをチャーターしてその参加者を会場まで運ぶことは、一般的には必要やむを得ない実費の補償と認められるので寄附にはあたりません。
- 香典返しとして物品等を贈ることは、その地域において香典返しが社会習慣上定着した一種の義務的なものとなっている場合、もらった香典に対して返戻の程度(例えば香典の半額程度)の香典返しをすることは差し支えないと考えられます。
- 公職の候補者等が行う政治教育のための集会において、選挙区内にある者から1000円の弁当代を徴収し、1100円の弁当を出すことは禁止されます。
公職の候補者等の寄附の制限違反
(罰則)法第249条の2
(1)選挙に関する寄附の禁止違反
法第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)第1項の規定に違反して当該選挙に関し寄附をした者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
(2)通常一般の社交の程度を超える寄附の禁止違反
公職の候補者等が通常一般の社交の程度を超えて法第199条の2第1項の規定に違反して寄附をした場合については、当該選挙に関して同項の規定に違反して寄附をしたものとみなされ、(1)と同じ罰則が科される。
「通常一般の社交の程度」とは
その寄附の金額、相手方、交際の状況等により、社会通念上社交の程度と思われる程度をいうもので、例えば、平常は何らの交際もなく、特に格別のことをすべき相手方でもないにかかわらず、選挙間近になってから、特別に祝金を贈ったり、香典を贈ったりする場合、また、通常は千円程度の寄附をすれば足りるような場合にもかかわらず、一万円を寄附したような場合は、通常一般の社交の程度を超えるものと考えられています。
(3) (1)または(2)以外の寄附の禁止違反
法第199条の2第1項の規定に違反して寄附(当該選挙に関しないもので、かつ、通常一般の社交の程度を超えないものに限る)をした者で、次の各号に掲げる寄附以外の寄附をしたものは、50万円以下の罰金に処する。
(ア)公職の候補者等が結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関する祝儀の供与
(イ)当該公職の候補者等が葬式(告別式を含む)に自ら出席しその場においてする香典(これに類する弔意を表すために供与する金銭を含む)の供与又は葬式の日までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与
(注意)平成元年の法改正において、一部の例外を除き、選挙に関しない場合で、かつ、通常一般の社交の程度を超えない場合についても罰則が科されることとなりました。これにより、従前禁止されていた寄附の範囲と罰則の対象となる寄附の範囲が一致することとなりましたが、例外的に上記の(ア)・(イ)の寄附については罰則の対象としないこととされました。
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更新日:2021年12月24日